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古川の家

敷地は宮城県郊外に位置し、豊かな田園風景に囲まれた地域である。

西側に広がりをもつこの敷地は近接する田園の奥に山並みを臨み、四季折々の光景を見せてくれる場所でもある。

南北に長い敷地の中で、先ず西側への眺望の確保を考慮した上で、周辺の家々や樹木の日影や周囲の西風を考慮し、周辺地域との関係性をもたせるように建物を配置した。

設計の初期段階で、首都圏からこの地に居を移した施主が理想とするくらしについて、幾度となくヒアリングを重ね、施主にはご家族の「未来の日記」書いていただいた。朝から晩までの具体的な生活イメージを記述をしていただく中で、諸室を最小限とし、子供たちの成長に合わせて家の使い方を変えていける冗長性をもたせ、余白を内包しながらも一体的なつながりをもたせる構成をめざした。

形式としてはかつての民家のように通り土間をもち、居室を南に開いたつくりではあるが、今日的な快適性を担保するために、一体的な空間構成に沿うように温熱環境の計画を行い、第一種換気及び床下空調方式を採用することで、土間からリビングにいたるまで冬季においても室温20℃を保つ断熱性能を確保している。同時に屋内においては中間期の通風のシミュレーションを行うことで、日常的な窓の開閉による自然通風を確保し快適性をもたせることを意図した。内外装の素材には宮城県産材の杉を各所に利用しており、通り土間には巾1尺の1枚板を並べ、東北地方の豊かな資材の恩恵にあずかっている。また建物周囲には表情豊かな地場の川石を敷き、地域性を体感できるように意図した。外構については最小限の設えとし、施主家族が住みながら徐々に手を加えてゆける場所としている。

周囲の悠久ともいえる風景の中でご家族がその生活を描いてゆく中で、その器としてこの建築が少しの手助けになることを願っている。 

・所在地:宮城県大崎市

・構造:木造平屋建て

・延床面積:104㎡

・竣工:2022年

・構造:(株)テクトニカ

・施工:(有)佐七建設

・CFD解析:スタジオノラ

​・サイン:マルヤマデザイン

・撮影者:小川重雄

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