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21.12.30



先日、大学院時代の先輩が住み継がれた住宅を拝見する機会がありました。

閑静な住宅街に佇む外観を眺め、内部に至るアプローチに足を踏み入れるだけで、どれだけの手間がかけられているかを感じ、かつての住宅設計の世界を垣間見た心地でした。

住宅のメインとなっているのは天窓からの光を届ける吹き抜けで、間接照明やおそらく障子等があった木格子等を設けていた手の込んだもので、その後にも木壁を通して光を導くなど、室内に至るまでに数手をかけ、ある意味奥ゆかしさもあり、当時の設計者の意思を強く感じました。


個人的に印象的だったのは造作工事が多く、建具関係の寸法感や造作家具の設え等、当時の価値観を如実に反映されているような気がし、その其々の関係性について考える時間にもなりました。建具枠の高さと高い天井高さが木造モダニズムの過渡期ならではの味があるように感じます。


私としては10年くらい前に住宅遺産トラストという活動団体が主催されている見学会でいくつか住宅を見せていただいたことがあり、その当時を思い出しました。多くの建物が著名な建築家によるもので、時代柄、敷地も広く、立地も一等地と恵まれた状況にありました。一方で、避けられない建物の老朽化とその土地が持つであろう資産価値のはざまに家屋が位置することに若輩者ながらその維持の困難さを感じたことを覚えています。


家屋に資産価値を持たせるスキームが今日でもあると言えない状況下において、維持し、住み継ぐいうどちらかというナイーブで小さな活動が結果としてその家屋を守り、その維持のためにはその地域や住まう人によるコモンセンスを基にした繊細なコミュニティ意識が必要となることを感じた記憶があります。成熟期を迎えている都市住宅地が抱えている課題は今日も変わらずむしろ拡がってありますが、使い手の意思次第で繋がれていく事実とその価値もあるのだと改めて感じた次第です。



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